愛犬が、他の犬に対して攻撃的になったり、一方的に追いかけ回したり、おもちゃを独占して唸る…
そんな姿を見て、心が締め付けられるような経験はありませんか？
「うちの子は、もしかして“いじめっ子”なのかしら？」と、飼い主様ご自身が深く悩まれ、苦しんでいらっしゃる姿を、私はこれまで数え切れないほど見てきました。
それは決して、あなたの育て方が悪いわけではありません。
犬の行動には、彼らなりの理由や背景が必ず存在します。
そして、適切な知識とアプローチで、その行動は必ず変えられます。
今回は、実際に「いじめ」と見られていた行動がピタリと止まり、愛犬と飼い主様、そして他の犬たちが穏やかに共存できるようになった、感動的な成功事例をご紹介します。
「まさかうちの子が…」悩みに光が差したAさんのケース
今回ご紹介するのは、トイプードルの「ココちゃん」（仮名、1歳半、メス）と、同じくトイプードルの「リリちゃん」（仮名、2歳、メス）の多頭飼いをされていたAさんご家族のお話です。
リリちゃんは元々おっとりした性格でしたが、ココちゃんが家族に加わってからというもの、ココちゃんがリリちゃんに対して一方的にマウンティングをしたり、食事中に吠えたり、おもちゃを取り上げて唸るなどの行動が頻繁に見られるようになったそうです。
Aさんは、以前は仲良く遊んでいた2匹の関係が崩れていくのを目の当たりにし、「このままだと、リリちゃんがストレスで病気になってしまうのではないか」と、深い不安を抱えていらっしゃいました。
散歩中も、ココちゃんが他の犬に会うと興奮して飛びかかり、威嚇するような行動を見せるため、ドッグランへ行くことも諦めていたほどです。
私がお話を伺った際、Aさんの目には涙が溢れていました。
「本当にこの状況が変わるのか、もう諦めかけていました…」
その言葉は、多くの飼い主様の代弁でもあります。
しかし、私には確信がありました。
犬の「いじめ」と見える行動は、多くの場合、犬の不安、ストレス、コミュニケーション不足、または適切なエネルギー発散ができていないサインなのです。
行動変容を促した、犬の習性を活かした３つのアプローチ
ココちゃんの「いじめ」行動を改善するために、私がAさんと共に取り組んだのは、犬の心理学と行動学に基づいた、決して犬を力で押さえつけることのない優しいアプローチでした。
環境の見直しとリソースガード対策
まず最初に行ったのは、ココちゃんとリリちゃん、それぞれの『安全なパーソナルスペース』の確保です。
今まで同じケージで寝ていた2匹でしたが、それぞれの寝床と、安心して過ごせるクレート（犬が落ち着ける、プライベートな空間）を用意しました。
これにより、お互いに適度な距離感を保つことができ、ストレスが軽減されます。
特に問題だったのが、ココちゃんのリソースガード（物や場所、人などを独占しようとする行動）でした。
食事やおもちゃ、飼い主様の愛情など、特定のリソースを巡ってトラブルが頻発していたのです。
これに対し、私は『分散給餌（食事の場所や時間をずらすこと）』や、おもちゃの出し入れを飼い主様がコントロールする『おもちゃの管理』を徹底しました。
これにより、ココちゃんは「自分が常に守らなくても、十分なリソースが与えられる」と理解し始め、安心感が芽生えていきました。
ポジティブ・リインフォースメントによる望ましい行動の強化
次に重要だったのが、ココちゃんが他の犬やリリちゃんと穏やかに接した時に、すぐに『ポジティブ・リインフォースメント（望ましい行動が出た時に報酬を与えることで、その行動を強化する訓練方法）』を与えることです。
具体的には、落ち着いてリリちゃんのそばにいる、他の犬に吠えずに通り過ぎる、といった行動が見られたら、すぐに「よくできたね！」と声をかけ、ご褒美を与えました。
これにより、ココちゃんは「穏やかにしていると良いことがある」と学習し、徐々に好ましい行動が増えていきました。
また、他の犬との適切な距離感を保つための『平行散歩（並んで散歩することでお互いの存在に慣らす訓練）』を繰り返し行い、徐々に『ソーシャルディスタンス（犬同士の適切な距離感）』を学びました。
飼い主様との信頼関係再構築と遊び方によるストレス発散
最も感動的だったのは、Aさんとココちゃんの間に揺るぎない『信頼関係（犬が飼い主を安全基地として認識し、安心できる関係）』が築かれていったことです。
Aさんには、ココちゃんに対して決して怒鳴ったり、体罰を与えたりしないようにお願いしました。
代わりに、ココちゃんのボディランゲージ（犬の感情や意図を示す身体の動きや姿勢）を注意深く観察し、不安や興奮の兆候を早期に察知し、未然に防ぐアプローチを徹底しました。
例えば、興奮しそうになったら、すぐに「落ち着いて」と声をかけ、アイコンタクトを促し、落ち着いたら褒める、といった行動です。
また、ココちゃんの有り余るエネルギーを適切に発散させるため、『ノーズワーク（嗅覚を使ったゲームで、犬の集中力を高めストレスを軽減する活動）』や『引っ張りっこ遊び（ルールのある引っ張りっこは、犬の満足感を高め、飼い主との絆を深める）』を導入しました。
これにより、ココちゃんは心身ともに満たされ、リリちゃんや他の犬に対する不適切な行動が驚くほど減少していったのです。
「いじめ」が止まった、その先の感動
約2ヶ月後、Aさんから「信じられないことが起きました！」と、弾んだ声でご連絡をいただきました。
ココちゃんとリリちゃんが、リビングで寄り添って寝ている写真が送られてきたのです。
「以前は考えられなかったです。おもちゃも仲良くシェアできるようになって…本当に感謝しかありません」と、Aさんの声は震えていました。
もちろん、これは一夜にして解決したわけではありません。
Aさんの忍耐と愛情、そして私たちが提供した犬の習性に基づいたアプローチが、まさに奇跡を生んだのです。
ココちゃんの「いじめ」と見られた行動は、実は「不安」や「助けを求めるサイン」だったのかもしれません。
それが、飼い主様との信頼関係、そして安全で予測可能な環境によって満たされ、ココちゃんは真の穏やかさを手に入れたのです。
もし、あなたが今、愛犬の行動で深く悩んでいらっしゃるなら、どうか諦めないでください。
犬の行動は必ず変えられます。
大切なのは、彼らの言葉を理解し、彼らの感情に寄り添い、科学に基づいた正しいアプローチで導いてあげることです。
あなたと愛犬の間に、より深い絆と平和な毎日が訪れるよう、私たちは全力でサポートいたします。
どんな小さなご相談でも、お気軽にお声がけください。
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