犬を飼うということは、単に可愛い存在を迎え入れるだけではありません。
時代の移り変わりとともに、犬との暮らし方も変化してきました。
その本質を理解し、真の「家族」として犬を迎え入れる覚悟があるのか、今一度考えてみましょう。
新しい家族を迎えるための大切な心得
犬を飼うって、本当に素敵なことです。
つぶらな瞳で見つめてきたり、しっぽをブンブン振って喜んでくれたり、一緒にいるだけで心が温かくなりますよね。
でも、犬を飼うということは、単に可愛い存在を迎え入れるだけじゃありません。
そこには、一つの命への深い愛情と、その子の生涯にわたる大きな責任が伴います。
「犬を飼いたいな」と考えているあなたに、ぜひ知ってほしいことがあります。
時代の移り変わりとともに、犬との暮らし方もずいぶん変化してきました。
昔と今とでは、犬との付き合い方が大きく違うんです。
その本質をきちんと理解し、真の「家族」として犬を迎え入れる覚悟があなたにあるのか、一緒にじっくり考えてみましょう。
昔と今、犬を取り巻く環境の変化
昔、犬はよく「番犬(ばんけん)」として家の外で飼われたり、人間が食べ残したご飯をもらったりすることも少なくありませんでした。
動物病院も今ほど多くはなく、もし病気になったとしても、十分な治療を受けられないこともあったんです。
でも、今はどうでしょう?
多くの犬は大切な家族の一員として、家の中で一緒に過ごすのが当たり前になりました。
そして、街中には動物病院がたくさん増えましたよね。研究も進んできました。
医療技術もすごく進歩して、ちょっとした怪我や病気なら、昔に比べて手頃な費用で治療を受けられるようになりました。
これは、犬たちがより長く、健康に過ごせるようになった素晴らしい変化です。
しかし、この変化は、飼い主さんの責任が軽くなったことを意味するわけではありません。
むしろ、これだけ選択肢が増えたからこそ、より深く犬の健康や幸せに気を配る必要性が高まったと言えます。
ご飯と散歩だけじゃない! 犬との暮らしに必要なこと
「毎日ご飯をあげて、お散歩に連れて行って、可愛いねって撫でてあげる」これだけが犬を飼うことだと思っていませんか?
残念ながら、それは犬との暮らしのほんの一部分に過ぎません。
犬が健康で快適に過ごすためには、他にもたくさんのことが必要なんです。
毎日の体のケア
- ブラッシング:犬の毛は、放っておくと毛玉になったり、皮膚の病気の原因になったりします。
毎日、または数日に一度、丁寧にブラッシングしてあげることで、毛並みをきれいに保ち、皮膚の健康を守ることができます。 - 爪切り:犬の爪は、伸びすぎると絨毯に引っかかったり、フローリングで滑って怪我をしたり、歩き方がおかしくなる原因にもなります。
定期的に爪を切ってあげる必要があります。 - シャンプー:体が汚れたら、シャンプーをして清潔に保つことも大切です。
犬の皮膚はデリケートなので、犬用のシャンプーを選んで、優しく洗ってあげましょう。
自宅で出来ない場合は、トリミング店に連れて行ってでもしてあげるべきケアです。
適切な運動
毎日のお散歩はもちろん大切です。
外の空気を吸い、気分転換になるだけでなく、排泄を促したり、体を動かすことで健康を保ったりする効果があります。
でも、それだけで十分ではない犬もいるんです。
特に、活発な犬種や若い犬の場合、もっと体を動かす必要があります。
広い公園でボール遊びをしたり、リードを外して(安全な場所で!)思いっきり走り回らせてあげたりする時間も必要になります。
もし何頭か犬を飼っている場合は、それぞれの犬がどれくらい運動が必要かをきちんと把握し、個々に合った運動量を確保できるような環境を考えてあげなければなりません。
健康管理
犬も人間と同じように、風邪をひいたり、お腹を壊したり、時にはもっと大きな病気になったりすることがあります。
「あれ?なんだか元気がないな」「いつもと様子が違うな」と感じたら、すぐに動物病院で診てもらうことが大切です。
早期に適切な診断と治療を受けることで、愛犬の苦痛を和らげ、元気で長生きさせてあげることができるんです。
病気にならないためのワクチン接種や、寄生虫予防なども欠かせません。
しつけと訓練
「うちの子は可愛いから何でも許しちゃう」という気持ちは分かります。
でも、それが結果的に、愛犬自身を危険な目に遭わせたり、周りの人に迷惑をかけたりすることにつながることがあります。
無駄吠えがひどくて近所迷惑になってしまったり、知らない人に飛びついて怪我をさせてしまったり、散歩中にリードを引っ張って飼い主さんが転倒してしまったり。
そうならないためにも、他の人に迷惑をかけないためのしつけは、飼い主さんの最低限の義務です。
「おすわり」「まて」などの基本的なコマンドだけでなく、社会の中で問題なく暮らせるように、根気強く訓練をしてあげることが大切です。
「お金がないなら飼わない」という選択も
犬を飼うことには、意外とたくさんのお金がかかることを知っていますか?
ご飯代、おやつ代、おもちゃ代、シャンプーなどの日用品費は毎月かかります。
それに加えて、毎年受けるワクチン接種の費用、蚊が媒介するフィラリア症の予防薬、ノミ・ダニ予防薬など、定期的な医療費もかさみます。
もし重い病気になったり、手術が必要になったりすれば、何万円、何十万円とかかることも珍しくありません。
これらの費用を、愛犬が生きている間ずっと、安定的に負担できる経済力がなければ、愛犬に十分なケアを提供することはできません。
「まさかこんなにお金がかかるなんて」と後から後悔することのないように、犬を迎え入れる前に、経済的な計画もきちんと立てておくべきです。
お金の面で十分な余裕がない場合は、残念ながら犬を飼うという選択は、その犬のためにならないこともあります。
「多頭飼育」と「多頭崩壊」の大きな違い
何頭かの犬と一緒に暮らす「多頭飼育」は、適切に行われれば、犬たちにとっても仲間がいて楽しい、豊かな暮らしを提供できます。
しかし、一歩間違えれば「多頭崩壊(たとうほうかい)」という、飼い主さんにとっても犬たちにとっても悲しい状況につながってしまう危険性も秘めているんです。
避妊・去勢手術の徹底
「可愛いから」とか「子犬が見たいから」といって、計画なしにむやみに犬を繁殖させたり、保護と称して次から次へと犬を増やしたりすることは、多頭崩壊の最初の入り口です。
予期せぬ妊娠を防ぐためにも、必ず避妊手術(女の子の場合)や去勢手術(男の子の場合)を受けさせましょう。
適切な頭数管理
飼い主さんが一頭一頭に愛情を注ぎ、きちんと世話をできる犬の頭数には限界があります。
全ての犬に十分な量のご飯を与え、その日の運動量に合わせて量を調整してあげられること。
どの子も定期的に健康チェックをして、病気を見落とさないようにすること。
十分なスペースで、清潔に暮らせるようにしてあげられること。
これらがきちんとできる範囲の頭数でなければなりません。
現在は第一種動物取扱業許可を持っていても厳しく頭数制限されています。
現在(2024年)の基準では、常勤の飼養・保管に従事する従業員1人あたり、以下の頭数が上限とされています。
犬の場合、スタッフ一人に対し20頭までとなっており、このうち、繁殖に供する犬(繁殖犬)は15頭までです。
ただし、親と同居している子犬(生後間もない子犬)や繁殖を引退した犬(その飼養施設にいるものに限る)は数に含まれないので、繁殖を引退した犬が増えてしまって多頭崩壊になるブリーダーが後を絶ちません。
これらの規定は、多頭飼育崩壊を防ぎ、個々の動物に適切なケアが行き届くようにするためのものです。
プロでも20頭以下が一番適切な数字だと思います。
犬を扱い慣れている一般の方であっても、この頭数を超えれば、ほぼ多頭崩壊(上記に記載した個々のケアが出来ていない)になっているのも事実です。
「多頭崩壊」ってどんな状態?
「多頭飼育」は、上で説明したように、全ての犬が飼い主さんの愛情と管理のもと、健全な環境で幸せに生活できている状態を指します。
一方、多頭崩壊とは、飼い主さんの世話をする能力や経済力をはるかに超えた数の犬を飼ってしまい、結果として、以下のような悲惨な状況に陥ってしまうことを言います。
- 家の中が糞尿で汚れたままで、不衛生な状態が続く。
- ご飯が足りず、栄養失調になって痩せこけてしまったり、共食いを始める。
- 病気になっても動物病院に連れて行ってもらえず、適切な治療が受けられない。
- 狭いスペースに閉じ込められ、満足な運動もできず、ストレスで問題行動を起こす。
- 毛玉だらけで体が固まっていたり、爪が伸びすぎて肉球に食い込んでいたりする。
これは、飼い主さんのエゴや無計画さによって、犬たちが想像を絶するほどの苦痛を強いられる状況なんです。
多頭崩壊は、飼い主さんだけでは解決できない深刻な問題であり、行政や動物愛護団体が介入して初めて解決できるケースがほとんどです。
しかし、残念ながら多頭崩壊を理解せず、保護しているだけだと思っている方がいるのも現状です。
多頭崩壊をしているにもかかわらず、本人は「保護している」と信じ込んでいる方々の心理状態は複雑で、いくつかの要因が絡み合っています。
彼らは悪意を持っているわけではなく、むしろ動物を「助けている」という強い信念を持っていることが多いのが特徴です。
- 「救済者」としての強い使命感
彼らは、自分こそが動物たちを救う唯一の存在だと強く信じています。
捨てられた動物や不幸な境遇にある動物を見過ごすことができず、「自分がこの子たちを守らなければ、誰が守るんだ」という使命感に駆られます。
この心理は、過去に自分自身が助けを必要としていた経験や、孤独感、自己肯定感の低さなどが背景にあることもあります。
動物を救うことで、自分自身の存在意義や価値を見出そうとしているケースも少なくありません。 - 現実からの逃避と問題の過小評価
動物が増えすぎると、飼育環境は悪化し、経済的にも破綻していきます。
しかし、彼らはその悲惨な現実から目を背け、問題を過小評価する傾向があります。
「まだ大丈夫」「もう少し頑張れば何とかなる」「みんな可愛いから」といった思考で、客観的な状況判断ができません。
動物たちの苦痛や不衛生な環境を見ても、それを深刻な問題として認識できないことがあります。
これは、現実と向き合うことへの恐れや、自分のキャパシティを超えていることを認めたくない気持ちの表れでもあります。 - 所有欲と支配欲
動物を「保護している」という名目で、実際にはコントロール下に置きたいという心理が働くこともあります。
多くの動物に囲まれることで、自分が主導権を握っているという感覚を得られ、自己の権力や重要性を確認しようとします。
動物たちは無条件に愛情を示してくれるため、人間関係で満たされない承認欲求や支配欲を満たす対象となることがあります。 - 社会的な孤立とコミュニケーション不全
多頭崩壊に至る人は、社会的に孤立しているケースが多く見られます。
近所の人や友人からの忠告に耳を傾けず、自分だけの世界に閉じこもりがちです。
これは、自分の行動を否定されることへの防御反応であったり、他人との適切なコミュニケーションが苦手であるため、動物との関係にのみ安らぎを見出すことで、人間関係の構築を避けている場合もあります。
孤立することで、客観的な視点やアドバイスを受け入れる機会が失われ、状況はさらに悪化していきます。 - 強迫性障害やその他の精神疾患の可能性
一部のケースでは、動物をため込む行動がホーディング障害(ため込み症)の一種として現れることがあります。
これは、物を捨てることが極端に困難になる精神疾患で、動物の場合も同様に、増え続ける動物を手放すことができなくなります。
また、うつ病や認知症、統合失調症など、他の精神疾患が背景にあることで、判断能力が低下し、適切な飼育ができなくなっている可能性も指摘されています。 - 動物福祉の知識の欠如
「愛情だけあれば十分」という誤った考えを持ち、適切な飼育管理や動物福祉に関する知識が著しく不足していることがあります。
例えば、避妊・去勢の重要性を理解していなかったり、多頭飼育には適切なスペースや個体ごとのケアが必要だという認識がなかったりします。
彼らにとっては、動物に餌を与え、「可愛がっている」こと自体が愛情表現であり、それ以外のケアが不足しているとは考えないのです。
このように、「保護している」と信じている多頭崩壊の飼い主の心理は、単なる悪意ではなく、複雑な精神状態や個人的な問題を抱えていることが多いです。
彼らを非難するだけでは問題の解決には繋がりません。
適切な支援と介入が必要となる、社会的な課題であると認識することが重要です。

あくまで個人的な意見ですけれど…
保護を名目に犬を引き取った人に関して、その方の施設や金銭状況って保健所も警察も誰も介入しませんよね。
保護を名目にしている方の生活状況を調べないと、保護された犬が本当に、適切な飼い方がされているのか疑問に思うところがあります。
実際、個人の保護も、愛護団体でも破綻しているわけですから・・・
まとめ
犬を飼うということは、一時的な感情や「可愛いから」という理由だけで決めてはいけません。
その子の生涯にわたる、長い長い責任と覚悟が必要です。
愛犬との幸せな共同生活のため、そして社会の一員としての責任を果たすためにも、今回お伝えしたことを深く理解し、自分に本当にできるのか、何度も自問自答してみてください。
それでも「この子を迎え入れたい」「責任を持って最後まで面倒を見る!」という強い気持ちがあるなら、きっとあなたは愛犬にとって最高の、そしてかけがえのない家族になれるでしょう。
コメント